読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

砂時計の気まぐれ倉庫

過去にどこかに書いた文章の気まぐれな再録が中心です。

謎の憎悪

(2006年4月11日にアップしたmixi日記の再録です)

 うちの家族と血の繋がりは無いが一時期同居していた、ある母親と幼い娘の話。 

 最初のうちはごく普通の親子だったのだが、ある時を境に、その関係に変化が起こった。 
 母親があからさまに娘を疎んじるようになったのだ。 
 暴力をふるうわけでも怒鳴りつけるわけでもないのだが、甘えて寄ってくる娘に対し、怒りとも憎しみともつかない態度を表に出して拒絶する。 
 最初は一時的なものだと思っていた。が、母親のその態度はどんどんエスカレートし、娘には見向きもせず、同じ部屋にいることさえ嫌がるようになった。 
 関係改善を図るべく、自分も母親の真意を探ろうと努めたのだが、全く掴みどころが無い。見ていた限りでは子育てのストレスがあったとも思えず、娘が気に障るような言動をした様子も窺えなかった。 
 そして、うちの家族とは良好な仲だったにもかかわらず、娘を嫌がるあまりに、その母親は突然家を出ていってしまった。 

 娘は取り残される形になってしまったが、うちの家族みんなに懐いていて可愛がられていたこともあってか、寂しそうな素振りを見せることは無かった。 
  
 一度、母親がふらりと舞い戻ってきたことがある。控えめな態度で玄関に姿を見せた彼女。こちらとしては喜んで迎え入れるつもりだったのだが、そこに娘が顔を出して対面した途端、激しい怒りを顔に浮き上がらせ、プイッと出ていってしまった。 
 その時の、とまどいと寂しさと悲しみが入り混じった娘の表情が忘れられない。 

 その後、外出先でその母親を見かけたことがあったのだが、こちらが近づこうとすると逃げるようにその場を立ち去り、姿を消してしまった。 
  
 そして、彼女は消息を絶った。 

 今でも不思議に思う。あの母親の娘に対する憎悪の理由とは一体何だったのだろう。 

 母親が失踪して二年ほど経ったある日、娘は車に轢かれて死んでしまった。 
  
 それ以来、うちでは猫は飼っていない。